音とクリスタルボウル

クリスタルボウルの音はなぜ長く響くのか?倍音と共鳴の話

文:mogmin.

「この音は何ですか?」という質問

クリスタルボウルの演奏を聴いた方から、「この音は何Hzですか?」と訊かれることがあります。とても自然な質問だと思います。音を知りたいとき、数字は便利です。数字があると、名前をつけられる。別の音と比べられる。自分が聴いたものを、誰かに伝えることもできます。

私も、音の数字を大切にしています。周波数を測り、音程を確認し、ボウル同士の関係を考える。音を感覚だけに閉じず、できるだけ正確に見ようとすることは、音に対する誠実さのひとつです。

そして、数字の外側にも、クリスタルボウルの音を形づくっているものがあります。

そのひとつが、倍音です。

音の中には、音がいくつもいる

私たちがひとつの音として聴いているものの中では、中心となる基音の周りに、複数の周波数成分が重なっています。それらが倍音です。

同じ音名でも、楽器によって音色が違うのは、倍音の含まれ方が違うからです。ピアノのCと、ヴァイオリンのCと、人の声のCは、同じ高さを持っていても、それぞれ違う音として聴こえます。音の輪郭、明るさ、厚み、余韻。それぞれの倍音の構成が、音の個性をつくっています。

クリスタルボウルにも、一つひとつ違う響きがあります。素材や厚み、形、大きさ、製造時のわずかな差によって、響きの立ち上がりや余韻が変わる。同じ音名に分類されるボウルでも、私には「こちらは空間の上へ伸びる」「こちらは身体の近くに残る」というように、違う方向性を感じることがあります。

音が消えるまで、音は変化している

クリスタルボウルを鳴らした直後は、音の輪郭がはっきりしています。マレットがふちに触れ、振動が起こり、空間へ音が広がっていく。そこから数秒、あるいはそれ以上の時間をかけて、響きは少しずつ姿を変えます。

最初に聞こえていた成分が遠のき、別の成分が前に出てくる。音が薄くなっているはずなのに、耳を澄ますと、最初には気づかなかった細い響きが現れることもあります。

だから私は、ボウルを鳴らすとき、音が生まれる前の静けさ、音が立ち上がる瞬間、響きが空間に満ちる時間、そして消えたあとに残る静けさまでを、ひとつの音のまとまりとして聴いています。

音は、鳴りながら変化し、消えながら別の表情を見せている。そんなふうに感じています。

倍音は、音の色や光のようなもの

音を説明するとき、私たちは「高い」「低い」「大きい」「小さい」と言います。音の体験には、その先に広がる部分があります。

「透明」「丸い」「銀色」「あたたかい」「奥に沈む」「空間を上へ抜ける」。

音を聴いた人が使う言葉は、音の高さよりも、音の質感を表していることがあります。私は倍音を、音に含まれる色や光のようなものだと考えることがあります。基音が音の中心だとしたら、倍音はその周囲に広がるグラデーションです。

これは、音を扱うときの私の比喩です。こうした比喩は、音を体験として捉えるために役立ちます。

同じCという音でも、倍音の違いで世界観が変わる。音の高さが同じでも、音が置かれる空間や、重ねる相手によって、まったく別の景色になる。

その変化を聴くことは、クリスタルボウルの大きな楽しみのひとつです。

共鳴は、音と空間と身体の関係

共鳴という言葉は、音の世界だけでなく、日常でも使われます。「その考えに共鳴した」というとき、単に情報を理解したという以上に、自分の内側と何かが響き合った感覚を表しています。

音響としての共鳴も、関係の中で起こります。音源、空間、壁や床、聴く人の位置、身体の状態。その関係の中で、音の感じ方が変わっていきます。

同じボウルを同じ強さで鳴らしても、部屋が変われば響きは変わります。床に横になるか椅子に座るかでも、身体に届く振動の感じ方は変わる。耳の位置が少し違うだけで、聞こえる成分が変わることもあります。

そこへ、その日の呼吸や緊張が加わります。昨日は心地よく感じた音が、今日は少し強い。いつもは遠くに感じる響きが、今日は身体の近くにある。

音は、鳴った瞬間から、空間と身体のあいだに関係をつくっていきます。

mogmin.が音の「あいだ」を聴く理由

幼いころからピアノに触れ、私は音程や和声、音の構造を耳から捉えてきました。楽譜を読むことよりも、音を聴いて構造をつかむほうが自然だった。音が一つずつ並んでいるというより、音と音の距離や、重なったときの変化を感じていたのだと思います。

クリスタルボウルに出会ってから、その感覚はさらに変わりました。

ピアノのように、鍵盤を押せば決まった音が出る楽器とは違う。ボウルは、触れ方によって音の立ち上がりが変わり、同じ楽器でも空間によって響きが変わる。音程の外側に、たくさんのものがある。

だから私は、音を単体で聴くより、音と音の「あいだ」を聴くようになりました。

ひとつのボウルの音が消える前に、別の音を重ねる。そのとき、二つの音がきれいに溶け合うこともあれば、少し揺らぎが生まれることもある。音の関係に緊張があるからこそ、意識がそこへ向くこともある。

純正律やPure Intonationを探究しているのも、音を、関係性として扱いたいからです。

SENOA.での音の設計

SENOA.では、その日のその人に合わせて音を選びます。周波数や音程は、音を知るための大切な情報のひとつです。

最初にお話を伺い、その日の体調や生活のリズム、身体の感覚を確認します。必要に応じて自律神経の測定も行います。そこから、その人の状態に対してどんな音の構成がよいかを考える。

身体と音が出会える場所を探す。

これは、その日の体験を丁寧につくるための、音楽的・身体的な設計です。

数字と感覚。基音と倍音。音と静けさ。その両方を並べて聴くことが、SENOA.の音のつくり方です。

音が消えたあとに残るもの

演奏が終わったあと、部屋には静けさが戻ります。でも、音が完全に消えたあとにも、聴いていた身体には何かが残ることがあります。

耳の奥に残る余韻。呼吸の深さ。床に触れている背中の感覚。音がないことに気づく静けさ。

それに名前をつける前に、ただ気づいてみる。今日は何が聴こえたのか。どの音が好きだったのか。どの音には距離を感じたのか。

倍音を知ることは、ひとつの音を、いくつもの意味にひらいていくことでもあります。

クリスタルボウルは、音を出すための器です。その器から生まれた響きは、空間を通り、身体へ届き、聴く人の内側でそれぞれの意味を持つ。

そのひとつの響きの世界へ、耳を澄ませてみてください。

※ SENOA.のサービスは医療行為ではなく、病気の診断・治療・予防を目的としたものではありません。感じ方には個人差があります。

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